242 研究領域の現状
田 中 彰 治(助教) (1989 年 4 月 1 日着任)
A -1).専門領域:非ベンゼン系芳香族化学,分子スケールエレクトロニクス
A -2).研究課題:
a). 大型パイ共役分子内における単一荷電キャリアーの外的制御原理の探索
A -3).研究活動の概略と主な成果
a). 本研究では「逐次合成法に基づく単一電子トンネル回路素子の単一分子内集積化」を目指し,各種基本分子パーツ の開発,及びそれらパーツ群の精密接合プロセスの開拓を系統的に進めている。今年度は懸案の課題(理論的分子 設計指針が出るのを期待していたのだが… … ),即ち「トンネル接合と静電接合の作り分け」を自在に行うための分 子設計論について集中的に検討を行った。まず「電荷が系全体に非局在化し易いタイプのパイ共役鎖」と絶縁部位 とからなる多端子接合系を各種合成した。また,これと対極的なシステムとして,「共役鎖の両端に電荷が集中する タイプのパイ共役鎖」を導入した多端子接合系も合成した。さらに現在,それらの間を埋める分子群として,両者 のハイブリッドタイプの合成を進めている。あとは被計測分子の実空間観測が可能な多端子計測系の開発を待って, 分子サイズや形状,また局所電子構造の調整・最適化を行う段取りである(いつまで待てばいいのだろう?)。なお, 単一分子鎖の導電特性に関する共同研究(阪大・夛田 G)については,単一分子伝導度の温度変化についての実験デー タが得られ,トンネル伝導からポーラロン伝導へ遷移する分子鎖長が明確となった。この知見は,分子パーツ群の サイズを規格化するための基本データであり,単一分子内集積化を実現するための足場の一つとなるものである。
B -7). 学会および社会的活動 学会の組織委員等
分子研分子物質開発研究センター・特別シンポジウム「分子スケールエレクトロニクスにおける新規分子物質開発」主催 者.(1998).
応用物理学会・日本化学会合同シンポジウム「21世紀の分子エレクトロニクス研究の展望と課題—分子設計・合成・ デバイスからコンピュータへ—」日本化学会側準備・運営担当.(2000).
第12回日本MRS学術シンポジウム:セッション. H「単一電子デバイス・マテリアルの開発最前線〜分子系・ナノ固体系 の単一電子デバイス〜」共同チェア.(2000).
F irst.International.C onference.on.Molecular.E lectronics.and.Bioelectronics.組織委員.(2001).
B -10).競争的資金
科研費基盤研究 (C ),.「シリコンナノテクノロジーとの融合を目指した機能集積型巨大パイ共役分子の開発」,.田中彰治. (2000 年 – 2001年 ).
科研費基盤研究 (C ),.「単一分子内多重トンネル接合系の精密構築法の開拓」,.田中彰治.(2007年 –2008年 ).
科研費基盤研究 (B),.「単電子/正孔トンネルデバイス回路の単一分子内集積化のための分子開発」,.田中彰治.(2010 年 –2012 年 ).
研究領域の現状 243 C ). 研究活動の課題と展望
今,本研究で最も必要とするのは,規格外の分子をきちんと取り扱うことのできる単一分子物性研究者である。しかし,非 周期的・定序配列型の巨大パイ共役分子が構築可能になったのがつい最近なので,そもそも実技指導者が皆無である。し かたがないので,単一分子伝導度計測済みの分子セット(1–20. nm)を,学部生あたりの練習用にばらまいて(委託合成を頼 むと数千万円はとられるぞよ),彼らの成長を気長に待つことにしよう。できれば,将来復活するであろう○研の「科学」の付 録に,ST M と一緒につけたいものである。